首飾りパニック

彼から誕生日にもらったペアネックレスがないことに気付いた夜9時。部屋中探してもない。どこにもないってばない…!
そういえば、出かける時は直に手に持っていたはず…。右肩には花柄トート、左手にはコージーコーナーの紙袋。トートバッグをいくらひっくり返してもない。筆箱もポーチもポケットも、全部見たけどやっぱりない。コージーコーナーの紙袋は出先で穴が空いていることに気づいて、急遽スタバもらった紙袋の代わりに捨ててしまった。わたし、紙袋にネックレス入れてた…??
曖昧な記憶、潤むひとみ、震える手。はやる気持ちを押さえながら、家族には「コンビニでコピーとってくる」と一言。ドアを開けるとどしゃ降りの雨で、傘を強く握って家を出た。
朝駅まで向かった道を、下ばかり見ながら歩いた。一瞬ドーナツ形のゴム片がネックレスに見えて、悔しくて端に蹴飛ばした。うつむく私をアスファルトは笑っているようだった。私はそんなアスファルトに涙をこぼした。
駅までの道のり半ばで引き返すことに決めた。自己嫌悪と絶望におぼれそうになりながら、重い重いドアを開けた。すると、玄関マットの脇に希望の光が見えた。ネックレスだった。
そういえば、今日は雨だからとスニーカーを締まってパンプスを出すために下駄箱を開けたんだ。ネックレスはそのまま玄関に置き去りにされていた。
自作自演でここまでハラハラドキドキしたのは初めてだ。見つけたネックレスに口づけると、彼女の寝床へそっとエスコートしてあげた。